レッツ・ぞめき ・グルーヴ「阿波踊りリズム考察」~私的鳴り物用語解説 木川隆志

最初にお断りしておきますが、この解説はあくまで私見であり、
アカデミックな用語解説とは別物とお考えくださいませ。

●「正調」お囃子

チャンカ・チャンカで例えられる二拍子のバウンスリズム。
ちなみにバウンスとは「弾む」とか「跳ねる」の意。
※黒人音楽の一つにシャッフルというダンスリズムがありますが、通じるところがあるように思われます。ひとくちに正調お囃子といってもよく聴くと、幅が広すぎて実は解説できません。「正調お囃子」を定義するのは「スポーツカー」を定義することと同じぐらい曖昧なものと思われます。

●「正調」と呼ばれないお囃子

ここ数年でよく聞かれる打楽器だけで奏でられる音量、音圧ともにもの凄いリズム。
※私には4拍子の16ビートに聞こえます。リズム自体は跳ねていませんが、これで女踊りをしたり、いわゆる「さし足」で踊るのは無理があると思われます。若い人に人気のある某連が「すり足」で踊り、女踊りを採用してないのは正しい選択だと思います。
現在作り出される楽曲が16ビート中心であるということを考えると、人気があるのも納得です。

04kane.jpg ●鉦(カネ)の役割

コンボの中ではリズムの芯です。自ら音を出せる指揮者のようなものです。
テンポや展開、エンディングまでも決定権があります。
なかなか美味しいパートですが、鳴り物全体の力量の印象が鉦によって決められてしまうぐらいの責任が発生します。
また、リズムのキレの部分は鉦によるところが大きいと思われます。

04fue.jpg ●笛の役割

笛の音は人間の耳に聞こえやすい周波数なのかも知れません。よってオーケストラ編成なみの鳴り物部隊や演舞場の雑踏といった場所でもよく聞こえます。
一般に鳴り物コンボの中では、メロディ担当ですが譜面には表せない情緒を醸し出すのがあの音色ではないでしょうか。また、スタッカート気味に吹く「きり笛」というのがあります。これはとてもリズミックなハイテクニックです。

04oodaiko.jpg ●大太鼓の役割

鉦がテンポ命なら大太鼓はノリが命です。上手な踊り子さんは一番大太鼓を聴いて踊る、もしくは踊らされるそうです。テクニカルなパートではありませんが、シンプルなフレーズで勝負するのはまさにファンクの神髄です。
ちなみに基本パターンの「ドドンガ・ドーン」はクラシックなフレーズ、「んっ(←休符)ドンガ・ドーン」はモダンなフレーズに聞こえます。叩く人も聞く人も音圧がお腹に響くのがこの楽器の特徴です。

04simedaiko.jpg ●締太鼓の役割

フレーズの間を埋めてリズム同士をうまくつなげる、フィル・イン(オカズ)を上手に使って、リズムに彩りを加えます。基本フレーズはあるものの、豊富なバリエーションが存在します。締太鼓のフレーズを聴いただけで、連名が特定できる場合もあるため、叩く人の個性が出しやすい楽器だと思います。
乾いた音色を出すために、皮のコンディションのキープや「締め」だけに紐の締め方が音色に大きく左右します。叩く以前に楽器をよく知ることも必要です。

04syamisen.jpg ●三味線の役割

「阿波踊り」の「ぞめき感」(心地よい騒々しさとでもいうのでしょうか)こそ三味線の醍醐味です。
一般にいわれる「チャンカチャンカ」だけでなく、メロディもコードもリズムを出すことができますが、いかんせん楽器単体での音量が小さく音域も狭いため、他の鳴り物の音に埋没して屋外ではほとんど聞こえないといった現状があります。また、三味線をかかえて町中を流す姿は老若男女を問わずビジュアル的にとてもカッコ良いのですが、チューニングに無頓着な場合が多々あります。残念!PAのある舞台演奏やメイン演舞場からちょっと離れた街角を少人数で流したりする時にこの楽器の良さが発揮されるのかもしれません。

04ookawa.jpg ●その他の楽器の役割

鼓(つづみ)や大皮(おおかわ)などのパーカッション系は少数派ですが、うまくアンサンブルにとけ込むと、鳴り物全体の質感が大幅にアップします。鼓は拍子のオモテ、大皮はウラで叩くのが基本です。両楽器が加わるとポリリズム(二つ以上の異なるリズムが同時に使われること)のようになってもの凄く格好良く聞こえたりします。

最後に私自身は鼓弓(こきゅう)を弾いたことがあります。よくみられる中国式とは違って三味線を小さくしたようなカタチをしています。弓の代わりに馬のしっぽの毛を束ねたもので弾きます。バイオリンのような音が出ますが、何といっても、かかえた時の「たたずまい」で勝負できる数少ない楽器でした。

以上長々と書き連ねましたが、踊る阿呆だけでなく通常は裏方の鳴らす阿呆にも注目して見ると「阿波踊り」の楽しみ方が広がるのではないでしょうか。