2012年8月

無限の夏へ

太陽が沈む頃、街のあちらこちらから、

鉦や太鼓、横笛の音が聴こえてくると、

今年も夏がやってきたなと思うようになった。


かつて京都で暮らしていた私が徳島へ移り住み、

あっという間に八年もの月日が経とうとしているが、

阿波おどりの魅力は、いまだに上手く説明ができない。


徳島独特の方言である阿波弁に面白い表現がある。

主に阿波おどりに夢中になって周囲が見えなくなる

愛すべきお調子者たちを"てんすい"と呼ぶのだそうだ。


もともと漢字の表記は存在しない表現のようだが、

「天から降る水と踊りがあれば、ほかには何も要りはせぬ」

という意味から「天水」の二文字を当てるのが一般的らしい。


阿波弁を研究されている徳島大学の仙波教授の説によれば、

全身に酒が回った状態を指す「霑酔」から来たとのこと。

なるほど、阿波おどりに興じる人々を街で眺めていると、

そもそもの漢字は「霑酔」だったのかもしれないと思う。


さまざまな人が、それぞれの形で愛する阿波おどりには、

「こうでなければならない」という定形はないのだろう。

答えが一つではないからこそ、上手く説明できないのだ。


自分だけの答えを探す夏が、今年もはじまっている。


えっとぶり

utiwa2012.jpg
ことしの「えっとぶりうちわ」ができた。7年目になる。
扇ぐ阿呆の会は9年目を迎えたが、
当初は会のメンバーも加わった素人連があって、
1日だけ街角に出て、主に輪おどりをしていた。
ある時、とりまきの人たちに「一緒におどらんで」と声をかけたら
その輪がどんどん広がった。
いろんな人が心から楽しんでいるのが、とても心地良かった。
街中がぞめき、うまい、へた関係なく、老いも若きも沸き立ってくる笑顔。
これが阿波おどりのいいところだと感じた。

そして、翌年。
「みんなでえっとぶりにおどらんで」と呼びかけようと、うまれたのがこのうちわ。
お盆だから帰省して、「えっとぶり!」
離ればなれになった仲間が出会って、「えっとぶり!」
昔、おどっていたが、子育ても一段落して、えっとぶりにおどる。
鉦や太鼓の音にさそわれて、家族揃って、えっとぶりに街に!
阿波おどりには「えっとぶり」が似合うんです。

素人連は消えたが、なつかしい阿波弁の響きもあって、
県内外で毎年このうちわを待ってくれる人がいる。
「えっとぶりうちわを見たら夏だ!」という声も聞こえるようになった。
今年はちょっと少なく4000本をつくった。
会員が思い思いに配布しているが、
新町橋北詰広場のだれもがおどれる「新町橋よいよい囃子」で
おどりの幕間で配られているのが一番数が多い。


ryogoku_panel_2012.jpg

両国橋南おどりステージ壁面パネル「えっとぶり」


     宮本 光夫