無限の夏へ

太陽が沈む頃、街のあちらこちらから、

鉦や太鼓、横笛の音が聴こえてくると、

今年も夏がやってきたなと思うようになった。


かつて京都で暮らしていた私が徳島へ移り住み、

あっという間に八年もの月日が経とうとしているが、

阿波おどりの魅力は、いまだに上手く説明ができない。


徳島独特の方言である阿波弁に面白い表現がある。

主に阿波おどりに夢中になって周囲が見えなくなる

愛すべきお調子者たちを"てんすい"と呼ぶのだそうだ。


もともと漢字の表記は存在しない表現のようだが、

「天から降る水と踊りがあれば、ほかには何も要りはせぬ」

という意味から「天水」の二文字を当てるのが一般的らしい。


阿波弁を研究されている徳島大学の仙波教授の説によれば、

全身に酒が回った状態を指す「霑酔」から来たとのこと。

なるほど、阿波おどりに興じる人々を街で眺めていると、

そもそもの漢字は「霑酔」だったのかもしれないと思う。


さまざまな人が、それぞれの形で愛する阿波おどりには、

「こうでなければならない」という定形はないのだろう。

答えが一つではないからこそ、上手く説明できないのだ。


自分だけの答えを探す夏が、今年もはじまっている。